

How do you feel “PHONK”
Doomshopが解くPHONKのヴィジョン
text:
アボかど
2025/05/27
日本のPHONKシーンにヘビープレスをかける《軍荼利》が、ついに禁忌の黒鐘を鳴らす。
Doomshop RecordsからCursed、Freddie Dreddが初来日出演。
さらに、OMSB、 FULLMATIC XX などバイナル・ネクロマンサーのローエンドがフロアの骨を軋ませる。
Real Playa's Ritual それは狂乱のclubasia──
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今回《軍荼利》に出演するDoomshop RecordsのCursedとFreddie Dreddは、PHONKを代表するアーティストに数えられる。PHONKはSpaceGhostPurrp率いるRaider Klanがスタートしたと言われることが多いが、SGPやRaider KlanのPHONKはラッパーが主導するものという前提があった。今日のPHONKのPlaya―それこそ《軍荼利》に出演する日本のPlayaたち―は、必ずしもラッパーとは限らない。PHONKではラッパーと同じかそれ以上にビートメイカーの存在が重要であり、彼らがサンプリングで召喚する古のラップの声ネタはPHONKに欠かせない要素の一つだ。
そういった意味では、Doomshop Recordsが取り組んできたPHONKは、Raider Klanのそれよりも一歩現行のPHONKに近い。声ネタのサンプリングを好んで使うこともそうだし、自身でラップする時も加工を施して声ネタっぽく聴かせるようなところがある。彼らの試みが日本を含む世界中のPHONKシーンに与えた影響は、きっと少なからずあるはずだ。
そこで今回は、《軍荼利》出演直前のCursedとFreddie Dreddにインタビュー。彼らが受けた影響や現在のPHONKシーン、そしてPHONKの今後などについて語ってもらった。
text:アボかど
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Doomshopの独自の音楽性が生まれたきっかけについて、CursedとFreddie Dreddに独占インタビューを敢行。
彼らの唯一無二の音楽はどこから生まれたのか——-
そのルーツと出自に迫る。
イベント当日を迎える前に彼らの音楽の核心と"PHONK"のヴィジョンに触れてほしい。


C - Cursed
FD - Freddie Dredd
― 日本での一日はどうでしたか?
C: めっちゃよかったよ。
FD: すごく良かったよ、いろいろやってたからね。こっちに来てから…
パスタ来たよ!今日がもっと良くなった。パスタ食えよ。
C: インタビュー中に食ってる(笑)
― 日本文化に影響を受けましたか?
C: もちろん。
FD: 100%影響されてる。ビジュアルスタイルとか、映画とか、サンプリングとかね。俺たち結構サンプリングするんだけど、日本文化からのサンプルが多いんだ。昔はアニメばっかサンプリングしてたよ。『serial experiments lain』とか、そのアニメをサンプルに使った曲がある。影響はめっちゃあるね。
C: 映画もアニメもカルチャーも、全部影響ある。間違いなく。
― 音楽制作で重視していることは?
FD: ミックスだね。Doomshopはすごく独特なサウンドがあって、それは全部ミックスにある。荒々しくて、ちょっと昔の時代っぽい音にしたいんだ。俺たちは常にサウンドを進化させようとしてるけど、やっぱりある種の“らしさ”は保ちたい。そのためのミックスだよ。俺にとってはね。
C: ミックスとフロー、そして1曲1曲の作りこみ。俺たちが作る曲には、基本的にドンとくるベースが必要なんだ。すべての曲じゃないけど、Doomshopの曲はたいていそう。聴きやすさも大事。
FD: グランジっぽさが必要。
― メンフィスラップのどこに惹かれますか?
FD: あの生っぽさとリリックかな。俺はメタルも聴いて育ったから、あの暴力的なリリックがすごくしっくりくる。メンフィスラップって、メタルに近い雰囲気があるんだよね。リリックは攻撃的で、ビートは速くて重くて、サンプリングも多い。90年代のラップの魅力そのものだよ。
C: メンフィスの音楽は、曲の構成にすごく影響を与えてる。ハイハットの鳴り方、ドラムの入り方、ボーカルのローファイっぽさも含めてね。今は多くの人がそのスタイルに注目して真似しようとしてるけど、俺たちはもっと前からやってた。
FD: 俺たちはずっと前から気付いてたんだよ、そのポテンシャルに。
C: それを自分たちなりにアレンジしてDoomshopってスタイルを作った。Doomshopは完全に独自のサウンド。メンフィスからの派生だけど、今ではサブジャンルの一つ。
FD: DoomshopはDoomshopなんだよ。
― 音楽キャリアにおいてロールモデルはいますか?
FD: もちろん。音楽を始めたときはニューヨークのラップをよく聴いてた。2Pacとかはあんまり聴いてなかったけど、サンプリングの面ではJ Dillaがすごく好きだった。彼のサンプルの選び方は本当にすごかった。
C: 俺にとって2Pacは大きな影響だよ。
FD: 俺たち出身が全然違うんだ。東海岸と…でもそれが混ざるのが面白い。
C: 冗談みたいな話だけどね(笑)
FD: そうそう、2Pacジョークとかやってるし。Tommy Wright IIIも好き。特にミックスのスタイルは彼に影響受けた。
C: Tommy Wright IIIに感謝。
FD: もちろんThree 6 Mafiaもね。めっちゃ影響受けた。あと、ラップ以外だとMeshuggah。あのバンド大好きで、808やドラムパターンは彼らから影響受けてる。子供の頃から好きだったし、今でも一番好きなバンド。
C: Slayerもな。
FD: Slayerもクラシック。歌詞もヤバい。お前ロールモデルいないの?
C: いっぱいいるよ。
FD: 何人か言ってみてよ。
C: 母ちゃんに感謝。それが一番のロールモデル。あと音楽でいうと90年代ラップの人たち。東も西も。2Pacも。
FD: “Dear Momma”の影響でお母さんがロールモデル?(笑)

― DOOMSHOPはPHONKシーンにどんな影響を与えたと思いますか?
FD: あらゆる面で影響を与えてると思うよ。今のPHONKって呼ばれてる音楽、元を辿れば全部Doomshopだと思ってる。今の“Drift Phonk”もそう。俺たちが始めたわけじゃないけど、先にやってた。俺がDoomshopに入った頃、Cursedはもうやってた。
C: MC Holocaustもね。
FD: 彼に感謝。最初から「これ絶対くる」って思ってたし、今のシーンの基盤になってる。2014年とかに出した曲、今でも聴かれてるからね。本当に影響力は大きいよ。それを否定するやつはバカだと思う。
C: Doomshopっていうグループの存在を、多くの人が見過ごそうとしてる。真似して、自分のスタイルのように語るけど、元はDoomshopなんだよ。今じゃメインストリームのラッパーたちまで真似してる。
FD: “Babushka Boi”とかね。
C: あれ完全にDoomshopのビート。
FD: あのカウベルの音とドラムパターン、まさにそれ。
C: 俺らが始めたわけじゃないけど、復活させたんだよ。Raider Klan、Chris Travis、Bones(正しく聞き取れたか分からないです)にも感謝。
FD: $uicideboy$もな。
C: あいつらもシーンを支えてる。本当に愛を送るよ。Doomshopのサウンドを聴いたら、「あ、これだ」ってなる。それが凄い。
FD: 俺たちが作ったもんだよ。ちゃんと調べてみな。そしたらわかる。
― PHONKが日本で知られていることは知っていましたか?
FD: 実はかなり早くから知ってた。Cursedが俺の初カセットテープを作ってくれた時、昔のシングルを全部詰め込んだ“ベスト盤”みたいなやつで、それを日本のコレクターが手に入れてコレクションに加えたんだ。それで2014年か2015年にはもう日本でも聴かれてるんだって気づいた。
C: 当時、日本でめちゃくちゃ有名だったわけじゃないけど、めっちゃ熱心な日本のファンはいたよ。東京、大阪、広島とか、いろんな場所からね。Doomshopの音が届いてるのがすごい。日本のこと、大好きだよ。
― 今後PHONKはどう進化していくと思いますか?
FD: 多分死ぬと思う。TikTokとかで今めちゃくちゃ出回ってるから、飽和状態なんだよね。全部同じような“DRIFT PHONK”ばっか。簡単に作れるし、クソみたいなもん。俺らの音楽をPHONKとは呼びたくない。Doomshopには典型的なPHONKもあるけど、今の流れはクラッシュすると思う。全部同じサウンドだし、つまらない。
C: これからはPHONKのサブジャンルが出てくると思う。
FD: 今のはマジで酷い。
C: このままだと長続きしない。変化が必要。カウベルの音とか、同じようなパターンばっか。それってラップの歴史でもあるよね。90年代ラップも今の若い子にはウケないし。2PacやBiggie聴いてる子、少なくなってるし。PHONKもその道をたどると思う。もっと新しくて面白いことやらないと。
FD: 今のPHONKは金稼ぎの道具にされてる。Spliceからループ拾ってきて、同じカウベル鳴らしてるだけ。廃れていくよ。でもDoomshopスタイルを続けてくれたら嬉しいね。何年経ってもいい音だと思うから。
― 今後の予定は?
FD: これからもガンガンやっていくよ。2025年はずっとツアーしてて、カナダ出身の俺にとってはアメリカは外国だから、家から離れてる時間が一番長い。でもこれからもツアーし続けるし、新しい場所にも行く予定。音楽も出し続けるよ。
C: たくさんのライブ、たくさんのツアー。新しい曲も作ってるし、いろいろ動いてるから期待してて。Doomshop全体としてもね。MC Holocaustとか、みんな戻ってくるし。
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-以下アボかどによる解説
振り返ってみると、ここ15年ほどのヒップホップで最も存在感を増した地はメンフィスだったのではないだろうか。A$AP RockyやDrakeといったメンフィス・ラップ影響下にあるラッパーがスーパースターとなり、Three6Mafiaの曲は定番サンプリングネタとなり、Key GlockやGloRillaといった新たなメンフィス出身者が活躍し……などなど、メンフィス・ラップに関するトピックはいくつも挙げることができる。
サブジャンル「PHONK」の発展もその一つだ。フロリダ出身の奇才・SpaceGhostPurrpが1990年代のThree6Mafiaのダークでローファイな質感を受け継ぎ、新たな形で提示したことで始まったこのスタイルは、その後Doomshop Recordsの面々やDJ Smokeyなど様々な才能により磨き上げられてきた。その熱気はアメリカを飛び出してロシアやウクライナなど東欧にも届き、ドリフトしながらTikTokで暴走。Kaito Shomaの「Scary Garry」などのヒット曲を生み出した。しかし、PHONKを構成する要素はメンフィス・ラップだけではない。Kaito Shomaのアーティスト名もそうだが、Three 6 MafiaのDJ Paulが自らフォンクに挑んだ「KENKA 喧嘩」のように日本語が使われることも多い。メンフィスから遠く離れた日本が奇妙に接続されたものが、東欧で盛んに作られているというのはなんとも不思議な状況である。
日本とも浅からぬ縁があるカルチャーのPHONKが、日本にもしっかりと根付いて成長していることを感じられる作品だ。フォンク及びそのルーツである黎明期のメンフィス・ラップはカセットテープでのリリースが多いが、本作もカセットテープでリリースを前提としたA面/B面に分かれた作りとなっている。A面はビートメイカーによるインストで固め、B面はバンド形式のハードなスタイルで始まりその後はラッパーたちが次々と登場。この中心を境にモードを変える構成は、まさにカセットテープでのリスニング体験を前提としたものだ。サウンド面では強烈な低音やローファイな質感といったフォンクのマナーを軸としつつも、曲ごとに異なる魅力が楽しめる。バンドで挑んだハードな路線、西海岸ギャングスタ・ラップと隣接するファンキーなスタイル、どことなく日本的な枯れたメロディ感覚を備えたもの……などなど、一本の芯が通りつつもバラエティは実に豊か。それはメンフィスや日本、東欧など様々な地との縁を持つフォンクの特性を反映したようであり、八本の手を持つ軍荼利明王の名前を冠したタイトルに相応しいものだとも言えるだろう。
初めにメンフィス・ラップにまつわるトピックを振り返ったが、その中で黎明期のメンフィス・ラップの特色であるカセットテープ文化を受け継いでいるものはフォンク以外にはそう多くない。1990年代のメンフィスから場所も時代も遠く離れた2025年の日本で生まれた、伝統を守りつつも同時に現代的でもあるユニークな本作を是非堪能してほしい。
配信はこちらから⤵︎
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